71ply

2006
住宅
滋賀県守山市守山
木造2F建
施工:株式会社 白畑建設

2007/12 新しい住まいの設計 掲載
2008/04 CONFORT 掲載

2009/12 季刊 ディテール153号 掲載

滋賀県守山市、電車で大阪より1時間、京都より30分のベッドタウンとして、この数年人口が増加している街である。琵琶湖の東岸に位置しており、蛍が生息し、田んぼがまだ残る風通しの良い地域である。
敷地は、旧中山道付近にあり、その両側30mエリアは、古い町並みが保存区域として残されているが、そこから外れると、新快速停車駅の守山から徒歩圏ということもあり、13階建て、地上40m以下のマンションや派手な建売住宅が乱立しつつある。   
この敷地の南側には、古いお寺、道を挟んで南西に廃業した造り酒屋を利用した資料館が、瓦屋根・土壁で前面道路に風情を与えていたが、竣工1ヶ月前、マンション建設のため資料館は取り壊された。
この住宅の外壁の色は、瓦屋根の町並みを映しとった色である。

<形態操作>
周辺環境より遮断するように、敷地いっぱいに南北に細長いヴォリュームをまず設定し、この敷地において唯一開くことのできる南西方向に向けて斜めに切断し、抜き取った。
そのことにより、庭やウッドデッキスペース等のプライベートの外部空間を作り出した。

<空間構成>
内部空間は、その細長いヴォリューム(巾4300mm×高さ4800mm×長さ10000mmの断面形状)を構造用合板で囲み、大きな木の空間とした。LDK・趣味の部屋・予備室(将来の子供部屋)として使用される。

木の空間と西側道路の間には、巾2000mmのゾーンを置いた。
1Fは、玄関・水廻りのあるモルタルのグレーゾーンとした。
2Fは、開かれた外部(南西方向)に向けて、真っ白なプライべート空間(寝室・WIC)とした。

<住み方から生まれる空間の必然性>
1Fは、玄関 +LDK +水廻り +趣味の部屋 (PC部屋、奥様のwebデザイナーをめざしての勉強部屋)
2Fは、Bedroom +WIC +予備室 (ご主人の趣味のギター5台、陳列。1F LDKより吹抜越しに見える)
となっており、将来的には、
1F趣味の部屋 →SOHOのための仕事部屋 (子育てしながら仕事をすることを想定、Kの近くに配置)
2F予備室   →子供部屋 (2人を想定し、窓・扉を2カ所設置、家具で間仕切る予定)
に変換可能なプランで、30代前半の夫婦のためのフレキシブルな生活の器として機能している。
構造用合板という素材で、大きく生活空間を囲い、家族が増えたとしても、ライフスタイルが変化したとしても、
窮屈さを感じることなく、家族の気配が感じられる様な空間をつくった。

<ワンルームが生活の熱環境を整える>
冬 仕事を終え、帰宅して、1F/LDKでエアコンをつける。すると就寝時には、暖められた空気は2Fの寝室に溜まり、エアコン以外の特別の暖房は不要であった、という。
夏 この敷地の風の通り道をよみ、それをふさがない様に、開口部を設けた。室内に入った空気は、その道をふさぐ方向に大きな壁がないため、そのまま通り抜ける。また、屋根裏にたまる熱気は、ワンルームの上部で一気に強制換気で逃がすことにした。

<ply(プライ=層)してできた木の空間>
構造用合板の積層は、当事務所の工務チームM.ismの実績のひとつである。
施工方法は、4年前より試行錯誤を始めたもので、事務所にある打合せテーブルから始まり、マンションのリフォーム、住宅と方法論を積み重ねていき、より美しく、より早く組み立てることを目指した。今回、他の工務店の大工さんに工事可能なレベルにまで達した。

床・壁・天井の仕上げは、12mm厚(5〜7ply)の構造用合板を重ね、10ply以上の仕上げとした。
玄関を入ると目の前に立ちはだかる壁。2F上部のハイサイドライトから、透明素材でできた2Fの廊下の床を透過して、1F玄関前に太陽光が射し込む。
この家の中央に存在するこの壁が、大きなワンルームの木の空間においてプライベートスペースを作り出すしきりとなる。
71plyとは、この廊下の壁の両サイドのply(層)の数で、その木口をあらわしとした。

撮影:平井美行